【次回例会・作品紹介】
無名塾
セールスマンの死
仲代ウィリーの演技は,濃密な家庭劇として現代に生きる私たちに迫ってくる。
●スタッフ
作=A・ミラー,演出=林清人

●キャスト

出演=仲代達矢,小宮久美子,野崎海太郎,松崎謙二,西山知佐,赤羽秀之,中山研,進藤健太郎,佐藤一晃,滝藤賢一
    
●会員手帳から
帰宅してから翌日の深夜までの一日半の出来事だが,ウィリーの回想と幻想が巧みに交差した密度の高い舞台は,巨大な現代社会の中で過酷な現実と過去のよき時代への幻想を持ちながら押しつぶされていく人間の悲劇を見事に描いている。

●公演ビラから
やり場のない現代社会の歪みを家庭劇として描くアーサー・ミラーの傑作、仲代達矢が万雷の喝采に応え再演します。

仲代は,ウィリーの滑稽なほどの愚かしさまで含めて存在感を持って「父の悲劇」を演じた。自殺の前に,高層建築物に囲まれてしまった自宅の空き地に種をまくシーンは凄みさえある。(高橋豊,2002年2月2日毎日新聞夕刊)

出口なしの状況に至るウィリーの頭の中には現在と過去が同時に共存する。仲代はその苦悩を見事に活写した。(北川登園,2001年1月25日読売新聞夕刊)

1999年ニューヨークで会った80歳のアーサー・ミラー氏は、「これは家族の愛の話である」と私に語つた。
1949年この作品でピュリッツア賞を受賞し、劇作家としての地位を確立したアーサー・ミラー氏だが、
この作品は50年たった今もなお新しく、人々の心を捉える。不器用に切なく家族を愛し続けた男の悲劇は決して他人のものではない。   仲代達矢

●このゆびとまれ11月号から
仲代達矢、69歳。黒沢映画の常連として世界的に知られ、無名塾の主宰者でもある名優が、今年で俳優生活五十周年を迦えた、「五十年なんて、あっという間ですよ。ついこの前、役者の道に入ったという気が今でもしています」

幼くして父を亡くし、食べるための職業として選んだのが役者の道。十九歳で俳優座養成所に入り、早くから千田是也の舞台や黒沢明、小林正樹らの映画で活躍、これまでの出演作品は映画130本以上、舞台56作品、テレビ50本以上を数える。

これぼどのキャリアを持つ仲代でも、役者というのは難しい職業だという。

「五十年やってても、役者とはこういうものだというのはまだ見つからないんですよ。「花実相応」という言葉がありますが,花=表現・技と、実=内容のバランスが取れていないといけない。その感じがなかなかつかめないんですよね」

僕が駄目な役者だけかもしれないけど、と笑いながら、それでも四十歳ぐらいから役者の面白さが分かってきたのだと話す。

「どんな役でも、分かる部分と分からない部分がある。分かるところは自分で処理し、分からないところはイメージや技術でカバーする。そのとき、芝居の作者がどういうつもりで書いたのかを考えることが、一番のヒントになります。

九月からは、五十周年記念公演「セールスマンの死」(林清人演出)で全国を巡回。仲代がアーサー・ミラー本人から許可を得て二年前に上演した舞台で、多くの再演希望を受けての公演だ。

「若いときは、何かと自由を拘束されるもの。これからは好きなものだけをじっくりやろうという、魂の作業に突入していくような気がします」

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