【次回例会・作品紹介】
青年劇場
菜の花らぷそでぃ
高橋正圀のらぷそでぃシリーズ第2弾。
日本の食をテーマに日本を考える社会派爆笑喜劇。
青年劇場ならではのぬくもりのある庶民群像と今を切り取ったリアリティある物語。青年劇場ファンならずとも必見!!
●スタッフ
作=高橋正圀,演出=松浪喬介,原作=山下惣一(「身土不ニの探求」(創森社刊))

●キャスト

出演=青木力弥,上甲まち子,田中慶太他
    
●このゆびとまれ10月号から
■正圀君の作品は常に笑いが溢れている。 −山田洋次(映画監督)

笑っているうちにほろ苦い涙が隠し味のようににじみ出し…ま,俺も(私は)まんざら捨てたもんじゃないんだ、という気持ちになって観客はなごやかに劇場を後にするのである。このような作風は今の時代にどれほど貴重かわからない。映画の世界では特にいえることだが、暗く,重く絶望的な作品があまりにも多すぎる。確かに僕たちの国は暗い。ぽくたち国民は果然とダッチロールの目眩の中にいる。

しかしそんな時代だからこそ、優しく慰められ、カ強く励まされような明るい作品に触れたい、と観客は切実に願っているはずだ。

正圀君の作品を見るとき、ぽくはいつでも正圀君その人にめぐり会ったような気持ちになる。彼の作品の明るさ、優しさを生み出すのはもちろん彼の思想であり教養と技術である

のだが、それだけでない。米沢の穏やかな風土の中で熟成された人柄、あの包容カと暖かさが、舞台から芳醇なお酒のように溢れでて観客をこころよく魅了するのだ。

■高橋正圀
山形県米沢出身。山田洋次氏に師事。TV「まんさくの花」「まっさい先生」映画「釣りバカ日誌」等のシナリオ。演劇は、90年に青年劇場「遺産らぷそでいぃ」が初戯曲で「愛が聞こえます」等の作品がある。)「冬物語」で好評を博した平幹二朗が斬新な演出で悲劇に挑む。老王と三人娘の愛を主軸に激しく,狂おしいリアの葛藤を描き,平の迫力ある演技が普遍的なテーマである家族愛を胸打つ感動に変える。

■ストーリー
佐賀県唐津市で専業農家をいとなんできた稲葉鉄人。だがこのところの農業離れや不況の為か、農業を取り巻く状況は一向に良くならない。そんな中、鉄人は「身土不二」という言葉のルーツを探るのに夢中だ。息子の大地は農業を見放したのか、佐賀で農業大学校の講師をやっている。ところが、その彼が仲間たちとグリーンツーリズムによって村の活性化を図ろうとしていた。それを知った村人たちは大反対!「観光と自然は相反するもの」「先祖代々の土地を好き勝手に出来ると思っているのか!」と村中の反発を受けながらも戦おうとする若者達。さらには、農家を知らないホームスティの農業高校生や大地の恋人がアメリカからやってきたりと稲葉家は大騒ぎ。果たして・・・

■初演の感想より…
今日思わされたのは食生活の貧しさは心の貧しさ、につながると実感しました。また人聞模様も忘れかけていた親父の在り方、家族の在り方みたいのもみることが出来ました。

素購らしい舞台でした。実際、自分が農家の一員になったような気がして。本当に深刻な問題が取り巻いていると案感した。

食に関する仕事に30余年携わり、食環境の荒廃、生活リズムの乱れからくる様々な間題等で21世紀が心配になることぼかりです。『菜の花らぷそでい』は、これらのことをわかりやすく、ユーモアをまじ
えて演じてくれました。

●公演ビラから
■物語
佐賀県唐津市の郊外。代々専業農家を守り育ててきた稲葉家。息子の大地は農業を継がなかったが、農業を諦めたわけではない。村を活性化しようと新しい観光業=グリーンツーリズムにとりくみ、その第一歩として「朝採れ野菜の産直」企業を興し、今や年商一億と絶好調。そんな息子の行動力に感心しながら、鉄人は賛同は出来ない。百姓の志が微妙に違うと感じるからだ。そこヘコンビニ依存症の高校生が絡み、大地を訪ねてアメリカから恋人か現れ,さらに鉄人が百姓を続けられうるかどうかの瀬戸際に追い込まれる事件が起きて、村は上を下への大さわぎ。

全国で300回の上演を重ね、笑いと涙で客席を包んだ「遺産らぷそでい」からl0年。農業を取り巻く環境は大きく変わった。食の安全を求めて再び「農」の時代はくるのか。東京初演から新たに大幅な改定を加え、「食」と「農」を問いかける高橋正圀氏の最新作!!

■「身土不ニ」との出会い−高橋正圀
以前,NHKのトーク番組「十代の言い分・食生活編」を見て,ショックに近い感情を味わった。のっけから、朝昼晩とコンビニの納豆おにぎりぱかり食べている子が登場して度肝を抜かれる。チョコレートが主食の女の子もいた。保存料が入ってない食品は逆に不安だという子、親と一緒に食事ができない子も多い。食事は家族の団欒というのは、旧世代の幻想にすぎないのか。

もはや副食だけではなく主食までコンビニに依存している若者たちの現実に、しぱしボーゼンとなったものだ。

時を前後して、山下惣一さんの著作「身土不二の探究」に出会った。人間はその土地で育ったものを食べて生活するのが最善とする考え方で、どこで採れたかわからない食材を使っているコンビニ食品とは、余りにも次元が違いすぎて、しかし、同じ国で同時に進行してるんだという現実が、今回の大きなモチーフになっている。

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