【作品紹介】
第256回例会 民藝+無名塾
ドライビング・ミス・デイジー
仲代達矢と奈良岡朋子,
夢の共演によるアカデミー賞
受賞作品を生の舞台で
●スタッフ
原作=A.ウーリー;演出=丹野郁弓

●キャスト
仲代達矢,奈良岡朋子,長森雅人,千葉茂則
市民劇場会報No.266から

■温かくて、誠案で、心が洗われる名作
人が自分らしく生きること、最後は友情を維持するために人の手を借りなければ生きていけないとしても『生きている』ことはそれだけで素晴らしいことなのです。

この話の舞台はアメリカ・アトランタ、時代は1943年から1973年です。あなたはおいくつでしたか?えっ、生まれていなかったって?

■1945年に第二次大戦が終わり、平和になったとはいえ、アメリカも大勢の兵隊が戦地から帰り、黒人差別の激しいアトランタでは,優秀な黒人も仕事にありつけない時代でした。

ミュージカルの脚本を25年間書き続けても1本もまともに売れなかった作家ウイーリーが、1985年最後の力をふり絞って書いたこの戯曲は、世界中の人々の胸を熱くし、ブロ一ドウェイでは3年問のロングラン。1987年ピューリッツァー賞受賞。映画では1989年アカデミー受賞。世界中の人々に感動を与えました。

■登場人物はたった三人。存在感抜群の三人で勝負。セリフの量も膨大。顔を黒く塗り潰すと表情が見えにくいのでややうす目にしているとのことです。

■登場人物
デイジー(奈良岡朋子)
教師を引退した元職業婦人。インテリでお金持ち。72歳から97歳までの人生を演じる。

ホーク(仲代達矢)
ミスデイジーのお抱え運転手になる。黒人。
六〇歳から八五歳までを演じる。

デイジーの息子(長森雅人,千葉茂則)
手広く商売して成功した金持。
*民芸の干葉茂則さんと無名塾の長森雅人さんが交代キャスト


■あらすじ
時は一九四八年から一九七三年までの二五年間。場所はまだまだ黒人差別意識が色濃く残るアメリカ、ジョージア州アトランタ。

裕福なユダヤ人未亡人、七二歳になるデイジィはいまだかくしゃくとしていて一人暮らしを続けているが、年のせいか車の運転が不得手となってきたようで事故を起こしてしまう。心配した息子のブーリーは黒人嫌いの母親をやっと説得してホークを運転手として雇い入れます。

独立心の強いデイジーと黒人のホークの仲はなかなかうまくいきません。最初はぎくしゃくしていた二人。しかし、ホークが文盲であることを知ったデイジィは、元教師の経歴を活かしてホークに文字を教え始めました。やがて二人の間には奇妙な友情が芽生えていくのでした。

この作品はニューヨークのオフブロードウェイで初演。最初は七五人入いる小劇場で一ニケ月の契約、果して何日観客が入るか疑問視されたが、人の口から口へその評判は広がり、三ケ月
終わる頃になっても切符の注文が止まらなかったという。それから更に三ヶ月延長したがそれでも切符は手に入らず、結局大きな劇場に変え、三年間のロングランを果たし、ピューリッツ
ァー賞を受賞した。

映画では無名だったモーガン・フリーマンが演じ、彼の人気もブレークしてアメリカンドリームを実現した。


■訳・演出の丹野真弓さんをお迎えして「ドライビング・ミス・デイジー」の魅力を探る会開催(7月8日 教育会館・野々市)

*魅力探険

デイジーとホークはそれぞれユダヤ人と黒人という双方とも差別されている存在です。ユダヤ人は国を持たない、追われた流浪の民。世界各地に散らばっていた民族。

財産を考えるとき、不動産ではなく、いつでも換金できる資産を好み、教育を重視。ある程度の資産を持ち、教育があればどんな所でも生きていけるという知恵があるんです。

デイジーは口では黒人を差別していないというけれど、黒人は頭が悪いのは当たり前、盗むのも当たり前との見方が根本にあります。一九六〇年キング牧師をはじめとする運動が興ります。デイジーは人権運動に目覚めていきます。

この芝居のテーマは人種差別の一面はありますが、本当のテーマはこの二人の友情だと思います。

年をとっても自立して生きていくというのはすさまじいものです。最後は友情を維持するため、誰かを煩わせなければならないけど、自立して自分らしく生きていく存在は感動をよびます。この人の作風はアメリカ的ではないように思います。むしろ日本的。控えめな会話は心理的にしっくりきます。

デイジーはなんでミスデイジーなのかとよく質問されますが、南部地方では職業婦人のことを下の名前にミスをつけて呼びます。既婚者とか未婚者の区別ではありません。

この地味な芝居が何故受けたのか、それはきっと芝居を包む人間の温かさ、誠実さ、清らかさでしょう。

丹野さんのさわやかな姿とあのボリュームある明るい声をお伝えできないのか残念

民芸のアンネ役をやった桜井明美さんは「丹野さんは演技指導も具体的で『この人について行けば問違いない』と思えるカリスマ性を持った人。稽古に入ると、みんなひとつになるくらい・・・」と言っていますホントそのとおりの印象でした。

■ウラ話
この芝居の豪華な顔合わせ実現は、鑑賞会の某氏が橋渡しをしたからとか・・・
共演作品は何にするか依頼された丹野さんはニケ月の間に四本の作品を翻訳したとのこと その中からこの作品が選ばれました。
私たら鑑賞会の運動は、「文化を支えている」大切な存在、プライドをもっと大切にして欲しいと丹野さんからの激励の言葉でした。

■丹野さんのプロフィール
民芸所属の翻訳家・演出家
早稲田大学仏文科卒で、お酒とパチンコを修得の豪傑(自称)。
原作の翻訳からこなし、近年「明石原人」などの話題の舞台を次々と手がけている。民芸に新風期待一押し。



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