金沢市民劇場1990年鑑賞分のまとめ
金沢市民劇場賞アンケートの原稿より

●盟三五大切
ニヒルでハードボイルドなタッチの歌舞伎でたいへんおもしろかった。昨年の「五重塔」より現代的感覚があって個人的には好きである。

●めいっぱいに夢いっぱい
華やかな出演者でそれだけで楽しめた。内容を重視すればこういう作品は市民劇場賞の対象にはならないが,年に1本は必要と思う。

●十二人の怒れる男たち
予備知識なして期待せずに観たが,たいへん見応えがあった。そのあと映画(ビデオ)版も観たが,それに劣らなかった。劇らしい緊張感とシンメトリカルな構成で劇を堪能できた。
@構成の良さ:1:12→五分五分→12:1というシンメトリカルな構成が面白かった。
Aストーリーの面白さ:推理小説風の進め方,というのは近年の市民劇場にはなかったような気がする。
B人間を見事に描いていた:NO.1〜NO.12の同じような顔をした人々が最後には顔を持った生きている男達になっていた
C民主主義について考えさせられた:判決が逆転する恐さと凄さ。その根底にある民主主義の意味について考えさせられた。
D翻訳劇くさくなかった:栗原小巻さんの出る翻訳劇についていつも感じるようなくささがなかった。
E「男だけ」「白人だけ」というのはちょっと問題があった。

●太平洋ベルトライン
エネルギーを感じた。安っぽさがよかった。ふざけてやっているようで本質をついていた。

●十一ぴきのねこ
近年の井上さんにはないイマジネーションが豊かだった。少々素人っぽかったが「船長」よりは数段楽しめるミュージカルだった。

●エセルとジュリアス
やはり予備知識なして観たが,ドラマの背景がわかりにくかったため,感動するにはいたらなかった。栗原さんの演技は好き嫌いが分かれると思うが,いわゆる新劇,といえばああいう感じだと大部分の人は思うのではないでしょうか?

●唐和参和
落語的な親切な構成でわかりやすかった。ただ,いくら芸達者とはいえ,「一人芝居」というのは寂しくてあまり好きではありません。

●船長
今年度中ではいちばん期待はずれでした。人情の世界とルポルタージュの世界の共存,ミュージカルとシリアスドラマの共存の難しさがわかっただけでした。
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