金沢市民劇場で1995年に観た作品のまとめ
金沢市民劇場賞アンケートの原稿から

●正しい殺し方教えます
ストーリー展開では今年いちばんの面白さ。楽しめる推理ドラマを市民劇場ではあまり観たことがなかったので貴重な例会だった。熊倉さんをはじめ個性の強い声優の演技だったのでドラマに洋画風の雰囲気があり良かった。

●キュリー夫人
最後の黒柳さんの(長い)スピーチがいちばん面白かった。こういう伝記モノは編年体でいくと平坦な感じになるが,この劇もそのとおりだった。ラジウムを発見する場がヤマだったのかもしれないが小さくて良くわからなかった。喜劇というのにあまり笑えなかったのがいちばんの不満点。

●マンザナわが町
井上ひさしさんらしい作品だったが過去の作品を越えていないと思った。最後のセリフのメッセージがくどく,何となく恥ずかしくなった。とはいえ前半は特に井上さんらしい笑いもあり十分楽しめた。

●サンダカン八番娼館
戦後50年にふさわしい作品とは思うが原作の方がきっと迫力があるのでは?と思った。毎年,鈴木光枝さん佐々木愛さんの出演する劇を見ているが,毎回ひたって感動している割りに,後から思うとどれも似たような印象で区別がつかないようなところがある。

●とってもゴースト
音楽と踊りをはじめ完成度の高いミュージカルだった。テンポの良い場面と見せる場面のメリハリが大変良くきいていてスカっとした。暗い世相のなかでこのミュージカルを観ていた時は現実を忘れることができた。そうさせてくれる作品は主題の重さを云々する前にすばらしい作品といえる。理由はわからないがすごい,というのがいちばん良い作品と思う。

●グレイクリスマス
これも戦後50年にふさわしい作品だったが,民主主義とか憲法とかをいくら考えても現実的になると解決しない問題ばかりなのですっかり暗くなってしまった。奈良岡さん以外の男の役者さんたちに魅力がなく,正直いって面白くなかった。

●セイムタイム・ネクストイヤー
二人芝居で密度が濃いのにリラックスして観られるという魅力のある作品だった。加藤さんはもちろんとして高畑さんが大変すばらしかった。二人とも口跡が大変よろしかった。あまり子供向きの作品ではなかったが,こういうロマンティック・コメディを恥ずかしくなく楽しめるというのは久しぶりのような気がする。

●汚れっちまった悲しみに
ただ叫んでいるような「熱演しているぞ」というような熱演は好きではありません。アマチュアなら許せますが...趣味が悪いとしかいえないと思った。

●市民劇場賞
消去法でいくと上述のとおり完成度が高く,どれも楽しめた「正しい...」「ゴースト」「セイムタイム」の3本は文句なしに残った。他の作品はそれぞれ有名な女優さんは出ていたもののあまり新鮮味が感じられなかった。残った3本はどれが1位でも良かったが「夢のようにすぎた3時間」というさわやかさが強く印象に残った「ゴースト」を1位とした。「セイムタイム」も良かったが結婚していない人にはピンとこない作品かもしれないので2位とした。「正しい」は驚くようなストーリー展開でこれもまたワクワクしながら劇をみることができたが,他の2つに比べ俳優の年齢が上だったため(これはこれで良かったのですが),ややインパクトの面で負けるような気がしたので3位とした。昨年は戦後50年ということで反戦・民主主義も考えないといけないのでしょうが,暗い世相の中で数時間でも現実逃避をさせてくれ,元気をつけてくれた作品の評価を高くした。全般的にはこの素晴らしい3本のおかげで大変満足のできる1年だった。

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