夢があるから!
スイセイミュージカル(金沢市民劇場258)
2006/01/15 金沢市文化ホール
●スタッフ
台本=高橋由美子, 演出=西田直木
●キャスト
相原奈保子,福島桂子,吉田要士ほか
 

●タイトルさえ良ければ
スイセイミュージカルによる「夢があるから」は、タイトルが良くなかった。あまりにもダイレクト過ぎるのである。今回のミュージカルは、主人公久美が振付師になる「夢」を持ち続け、それを実現する話なのだが、この物語に限らず、大部分のサクセス・ストーリーは「夢の実現」を描いているのでないだろうか?物語のテーマをそのままタイトルにするのは、芸がないと思った。

最初から、「夢、夢、夢・・・」の連続で少々恥ずかしい気分になった。今回の観客の多くは失礼ながら、将来の夢というよりは破れた夢を振り返る世代だったと思う。「今さら、夢を持つことが大切と言われても・・・」と困惑したのではないだろうか。前半はそのこともあって、とても子供っぽい話のように感じてしまった。厳しい競争社会であるアメリカのショー・ビジネス界で、相手の罪を自ら被ってしまうという前半の最後のエピソードも甘く不自然に感じた。

と、前半はあれこれひねくれて見てしまったのだが、後半は大変面白かった。ユーモアのセンスに溢れ、それでいてリアルなバックステージものとして楽しむことが出来たからである。その第一の功労者は大海原朱里江というキャラクターである。日本の芸能界の悪しき慣習をデフォルメして集約したようなものすごい存在感があった。後半が非常に面白いものになったのは、ゴリエならぬジュリエの力による。この怪物の力が大きければ大きいほど、それに挑む久美の姿がいとおしくなった。そこに前半の最後に作った「貸し」が返ってくる。途中から、そうなるかなという気がしていたのだが、借りを返して、前半のわだかまりが解消されるというエンディングは心地よかった。大変よくできた構成だと感じた。

後半は、いろいろな小技も冴えていた。ジュリエの飼っている「動くダックスフント」を見ながら、「あれ欲しい!」と思った人は多いだろう。ジュリエに当たる実在の歌手は誰なのだろうか、と詮索した人もいるだろう。結局、この作品はジュリエがポイントだったと思う。

個人的には、「夢があるから」という抽象的で理想的なタイトルにするよりは、「振付師クミ」というようなバックステージものを前面に出した方が良かったのではないかと思う。そうすれば、前半からもう少し素直に楽しむことができたのにと思った。

PS.この劇団名ですが、最初、私も「スミセイ」かと思っていました。これで二度と忘れません。 
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